「逆境」に負けない

自分が置かれている状況が厳しいとき。たとえば、仕事がない、ブラック企業に勤めている、家族関係がうまく行っていない、健康を害している、災害に遭った、など。

そういう境遇は「逆境」と言われますよね。そして、その「逆境」には大きく2種類あると言われます。

一つは、外からくるもの。自然災害、政治社会の何かに巻き込まれる、思いもかけない病気など。

もう一つは、自分で作り出すもの。人間関係、仕事関係、事業の失敗、不摂生による病気など。

そして、前者は「運命」で、後者は「自業自得」だという考え方があります。

そして、厳しい話ですが、よく考えると多くの逆境は、後者つまり「自業自得」によるものが多いのではないでしょうか。

このことに私が気付いたのは、ジェームス・アレンの『「原因」と「結果」の法則』や新渡戸稲造の『逆境を越えてゆく者へ 』を読んでからです。

正直に言って、この「逆境」を作り出したのは自分なのだと認めるのは、辛い作業です。でも、この作業があったからこそ、逆境すら淡々と捉え「負けない」と踏ん張ることができたのも実感です。

自分が作り出した逆境に負けない

「逆境」は自分で作り出したものによるところが多いと気づいた当時、私は45歳で無職。それまで、離婚、リストラ、パワハラ、単身赴任、長時間労働、苦手な仕事、子供のプチ不登校など、これでもか、というほどの「逆境」に見舞われていました。

何かあるたびに「どうして私ばかり。。」と運命を恨んだものです。

さらに、「私はこんなものではない。もっとできるんだ」と我武者羅に資格試験の勉強をして沢山の資格を取ったり、SNSに投稿して「いいね!」の数を数えたりするうちに、「自分はこんなもんじゃない。本当はもっと何でもできるんだ」という誤った「万能感」に取りつかれてしまいました。そして、ネットビジネスでの大成を夢見て勢いで仕事を辞め、貯金の8割を使い果たした挙句、無職になったのでした。

無職になった当時は、そこを「点」だけで見ると「逆境」でしょう。

でも、今振り返ると、そうなる過程では、やはり自分が引き起こしたことと言わざるを得ません。

たとえば、夫の不貞による離婚により生活が壊れたとき。不貞を防ぐことはできなかったかもしれないけれど、事実として私の身に降りかかったこと。ここをきちんと消化して、次へと心を切り替えることができずに「私は男運が悪い」と決めつけてしまったことで、自分に満足することができなくなってしまいました。

また、「リストラ」に遭ったとき。これは晴天のへきれきでした。リストラされる前は比較的高い給与の外資系企業だったのに、突然リストラされたことで、田舎の実家に戻りそこで職を探すということを受け入れることができなかった。端的には、お給料が半分くらいに減ったにも関わらず、「私はもっと高い給料を取れる人間なんだ」と、現実の給与金額を見ずに、自分を買いかぶってしまったのです。

そういうことの積み重ねで、どんどん「逆境」を生んでいってしまったのだと思います。自分で「逆境」を生み出しているにも関わらず、「どうして私ばかり。。」という気持ちはぬぐえず、仕舞いには「万能感」に取りつかれ、より大きな逆境の中に飛び込んでいったとで、私の逆境巡りはようやく終わりました。

私にとっては必要な過程だったのかもしれません。

でも、このブログを読んでいらっしゃるあなたには、私と同じような遠回りや無駄はしてほしくないです。

あなたは今、逆境にいますか?

そうだとしたら「どうして自分ばかり。。?」と思っていませんか?
不満に思っていませんか?
不幸感に打ちひしがれていませんか?

その気持ちに浸るのは、仕方がないことだと思います。

でも、少し時間がたったら、「もしかしたら、この逆境は自分で生み出したものではないだろうか。。?」と考えてみてください。

何か、思い当たる原因はないですか?
原因があれば、改善しましょう。あなたが生み出した逆境ならば、かならずあなたは越えていくことができるはずです。

逆境に負けないために

今、あなたが逆境にあるとしても負けないでください。

命ある限りは、好転させていくことができます。また、逆境からの学びは、順境での学びよりずっと奥が深く、強い。これは間違えありません。ですから、今逆境でも、ぐっとこらえて負けないでください。

ここでは、先にもご紹介した新渡戸稲造著「逆境を越えてゆく人へ」を参考に、逆境にある人が陥りやすい、6つの危険と注意したいことをご紹介します。

注意1 ヤケを起こさない

逆境にあるひとは、思いどおりにならないことが多いために、ヤケを起こしやすくなってしまいます。あなたも、思い当たることがないでしょうか?

どうせうまくいかないから、と投げやりにしてしまったり、どうして自分ばかりと、何事もイヤになって投げ出してしまいたくなったり。

でもそこで、ヤケを起こさないことです。「今は冬。冬は下に根を張ろう」そうとらえて今できることをやること。そして、「この先には何があるだろう。。」とちょっと爪先立ちで前を見てみましょう。

少し先を見る努力をしてみれば、明るい希望や光も見えてきませんか?悪いことばかりは続きません。人の一生での幸・不幸の総量は、そう大きくは違わないものです。それは、先人たちの歴史を見ればわかることです。

ですから、あなたも、ヤケを起こさずに爪先立ちで先を見て、目の前のことをやっていきましょう。

注意2 他人の境遇をうらやまない

自分が逆境にいると、人の幸福がまぶしく、うらやましく思えるものです。

例えば、離婚して独りぼっちになってしまったとき、お隣の家族がにぎやかに仲良く外出するのを見るだけでうらやましく思えるでしょう。仕事がないときには、早朝仕事に出かけていく車すら、うらやましく思えるかもしれません。

でも、人と自分を比べないこと。あなたの人生はあなたにしか作り出せないですから。

逆に、他人の人生をあなたが背負うことはできないし、代わることもできないですよね。他人を見てうらやましいと思うよりは、自分を見つめて自分はどうやったら自分の願う状況を作り出すことができるかに集中したら良いのです。

また、他人をうらやむということは、自分の心の狭さから起こるものとも考えられます。他人に良いことをすれば、まわりまわって自分にとっても良いことをもたらすと考えてみるのはどうでしょうか。今、余裕がなくてそこまでの広い心を持つことが難しいとしても、少なくとも、他人と自分を比べないことでも、ずいぶんとうらやましい気持ちが薄らいでくると思います。

注意3 他人をうらまない

「こんな境遇になったのは、誰それのせいだ」と思うことがあります。

私も恥ずかしながら、「万能感」にとらわれてすべてを失うことになったのは、「子供の頃に厳しく育てられて自己肯定感が低くなったため、自己承認欲求が強くなり、『自分は特別だ』と思わないと自分が保てないような心理状態に育てられてしまったからだ」と思う時期がありました。

つまり、育ててくれた親のせいにしていたのです。

これでは、いけません。逆境は自分で作り出したものなのに、人のせいにしては、状況は好転しません。

確かに、誰かのせいにすれば楽だから、よく人のせいにして、その人をうらんでしまうことは多いですよね。

でも、その「誰か」は、うらんだところで、あなたの人生を好転させてくれることはありませんよね。さらに、うらみをその人に直接あてれば、そのうらみが、まわりまわって自分のところにまで戻ってきます。そして、結局は、よくなるどころか、もっと悪くなる。

こういう状況を「ブーメランの法則」と説明している人の話を聞いたことがあります。

ブーメランの法則

誰かをうらむと、そのうらみは、自分のところに戻ってくる。
逆に、誰かを褒めたり、誰かに感謝したりすれば、そのポジティブなエネルギーも自分のところに戻ってくる。
まるで、ブーメランのように。

どうせ自分nところに戻ってくるのであれば、「うらみ」というネガティブな感情は要りませんよね。「感謝」や「賛美」などのポジティブなものが自分のところに戻ってくるように心がけるのが良いと思います。

注意4 天をうらまない

逆境にあると、「どうして自分ばかり。。自分の運命はこんなにも過酷なのか。。」と、天や神様や、見えないことや、運命をうらみたくなることがあります。

そして、占い師やスピリチュアルなものに頼ろうとしたり、神様なんていないとヤケになったり。

一方で「神は、その人が耐えうる試練しかその人には与えない」という考え方もあります。私は特定の宗教の熱心な信者ということではないのですが、この言葉はよく言われるので挙げてみました。

もし逆境だと感じることがあっても、それはあなた自身の力で切り抜けられること。試練に耐えたその先には、負けない人生が広がるはずです。

注意5 同情心を失わない

逆境にいると、人への思いやりを持つことが難しくなってきます。みんな君子聖人ではないですから、自分の余裕がないときに、他人への思いやりにまでは気持ちが回らないですよね。

また、同情心を持つどころか、周囲が優しい気持ちを寄せ、救いの手を差し伸べているにも関わらず、それに気づかずに自分の殻に閉じこもったり、周りは自分をもっとひどい目に遭わせようとしていると思いこんだりすることがあります。

たとえば、自分が誰かにお金を貸したのに騙されて返ってこなかった場合、あんなに信用した人だって誠実ではないのだから、人はみんな嘘つきだと思い込む。

職場で上司のパワハラに遭ってしまったとき、上司はみんなひどい奴だと思い込む。

その気持ちもわかります。でも、そんな気持ちだけで自分を埋め尽くしてしまうと、すごくギスギスした人間関係しか築けなくなってしまいます。

騙されたとしたら、これからは騙されないようにする。パワハラにあったら、その上司とは離れ別の職場を探してよい人間関係を築こうとする。

ちなみに、少し脱線しますが、パワハラに関しては、パワハラをする傾向がある人の下に、少し優しくて気の弱い方が部下になってしまうとよくあることだと思います。悲しいけれど、仕方がない。私自身、何度かパワハラを経験したから言えることです。だから、もし、あなたがパワハラに遭いやすいタイプだとしたら、これからはパワハラに遭わないように自分の気持ちを強くもったり、味方になってくれる人を確保しておくなど、これまでの辛い経験を繰り返さないよう、負けない気持ちでしっかりと立っていってください。

話を戻します。

同情心をなくしてしまうことの一番大きな弊害は、「他人の優しさに気付かなくなること」です。こうなってしまうと、あなたの状況を見て手を差し伸べてくれる人の優しさや、希望にも気づかなくなってしまうので、余計に自分の殻に入ってしまうことになりかねません。

どんな逆境に遭っても、他人への同情心や、相手の気持ちを受け止める心を無くさないよう気を付けていきたいものです。

注意6 心に傷を残さない

逆境に長くいると、そこから抜け出したとしても、耐える過程で心に傷を負ってしまうことがあります。逆境は、人の心を鍛えるものですが、逆に、猜疑心が強くなったり気持ちの余裕がなくなったり、温かみや余裕が少なくなってしまうことがあります。

それはそれで、生き方として失敗をすることは少なくなるかもしれません。

でも、やはり、もっと心豊かに、優しさにあふれた人生を歩んでいきたいですよね。

逆境に耐えて骨太になり、それだけでなく、気持ちもゆったりと柔らかになっていければ、ますます心豊かに生きていくことができると思います。

なかなか、難しいことかもしれません。でも、あれだけの逆境に負けずに立ち向かい、鍛錬しているあなたです。順境へ向かったならば、できるだけ心をゆったりもち、人の優しさを素直に受け取って感謝して、また、ご自身も人への優しさを少しでもいいから持つというように心がけていきたいと思います。

これは、私も今、心がけていることです。

逆境に負けず、むしろ逆境によって人生を豊かにしよう

ここまで、逆境に負けないために気を付けたいことを書いてきました。

今、あなたがどんな逆境にあっても、生きている限りは好転できるはずです。むしろ、逆境を経験したことで見えるものも、得ることも、あるはずです。

私は、45歳で無職になったとき、失ったものも多かったのですが、得るものの方が大きかったと思います。

表面だけ見ると、無職、貯金は2割しか残っていない状況。でも、それまでイヤイヤ続けていた仕事から、楽しいと思える仕事に変わることができました。給与は減りましたが、満足度は圧倒的に上がりました。貯金は減りましたが、「万能感」という心の病からは自由になりました。

自ら飛び込んでしまった逆境により自分の身の丈を知ることができ、「生きているだけで幸せだ」と思い至り、家族や仕事、毎日のご飯、友達との会話、色々なことに感謝できるようになりました。

幸せって、別に、お金の額ではないし、持っているものでは測れません。あなた自身が「幸せだ」と思うこと。これが一番幸せなんです。

ですから、逆境に負けないでください。逆境でしか学べないことを淡々と学び、人生の糧にしていきたいものです。

参考図書のご案内

新渡戸稲造著「逆境を越えてゆく者へ」

教育者であり、農学者である新渡戸稲造氏の書いた本。新渡戸稲造氏は、5千円札にもなりましたから、「5000円の人」として知っている方が多いかもしれませんね。私もそうでしたが。。

この本は、明治期にありながら、今に通じる真理が書かれています。現代は、極端な効率主義だったり、AIの台頭で従来の仕事がなくなるという不安の一方、インターネットの発達で一夜にして大成功を収めるような話も沢山ありますが、本当に大切なものは、いつの時代でもあまり変わりはないんだなと思います。

この本に古臭さを感じなかったのは、新渡戸先生の思想が新しかったのもあるでしょう。さらに、2011年の東日本大震災後に、再編集されたものだからでもあるかもしれません。

「今まさに逆境にいる」と悩み、明日への道しるべを探しているあなたに読んでもらいたい1冊です。